学習指導要領では、3つの観点で整理されることが多いですが、それが更新、再整理されると混同してきます。今回、平成29年改訂前後の学習指導要領の中で紛らわしかった点を見ていこうと思います。早速ですが、紛らわしいと感じたのは
- 改訂前:
生きる力の3つ観点 (知:確かな学力、徳:豊かな人間性、体:健康・体力)
確かな学力の3要素(基礎的な知識及び技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学取り組む態度度) - 改訂後:
改訂の方向性の3つ観点(何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶか)
資質・能力の3つの柱(知識・技能、学びに向かう力・人間性等、思考力・判断力・表現力等)
です。これらの関係は図にすると以下なりますかね。
改訂前だけ見れば、「生きる力は知・徳・体で表現され、知(=確かな学力)は更に3要素に分けられる」という理解でよいでしょう。また、改定後だけ見れば、「改定後は、「何ができるようになるか」、「何を学ぶか」、「どのように学ぶか」、で見直しを行い、資質能力の3つの柱を中心に整理した」という考えでざっくりと納得できます。疑問点は、改定後での知・徳・体の扱いはどうなってしまったのかです。
これを考える前に、これらが改訂後の学習指導要領のどこに位置するのか見てみましょう。
黄色で書いた「学習指導要領の方向性」と赤で書いた「資質・能力の3つの柱」の関係は文科省の資料※1にも明記されているので良いですが、問題は青色で書いた改定前の知・徳・体(生きる力)をどう捉えるかです。ここで、文部科学省の別の資料※2をよく見てみることにします。
資質・能力の3つの柱は知・徳・体を総合的にとらえて構造化したものとの記載があります。つまり改定後も知・徳・体の概念は残っているということです。これで、議論していた概念は全て出そろい整理できました。
では、総合的にとらえて構造化とは何を言っているのでしょうか?学習指導要領解説を読むと、現在社会で必要な力は「全く新しい力という事ではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し」とあります。この記述から、これまでの知・徳・体は改定後の資質・能力の3つの柱の中で形を変えて組み込まれていて、これを教育の観点から明確化するために改めて構造化した、と考える事にしています。
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